学習塾ブログ / バイオミメティクス(biomimetics)

2016年05月25日

バイオミメティクス(biomimetics)

バイオミメティクス(biomimetics)という言葉が広がってかなり時が経ちました。
生物は数十万年、数百万年という長い期間、自然環境に適応して形態を変え機能を変えてきました。つまり無数の試行錯誤をしながら進化してきたわけです。ですから、現在生存している生物の形や働きは自然環境に高度に適応しています。そうした生物の形や機能を工学的に模倣しようというというのがバイオミメティクス(biomimetics)です。つまり、技術開発のヒントとして生物から学ぼうということです。

これは実は半世紀以上前から活用されている技術ですが、最近、広範囲に自覚的に研究が進んでいます。オナモミのイガイガからマジックテープが考案されたのは1950年代です。

蓮の葉の表面のミクロ単位の形状から撥水性のヒントを得て、塗料の開発に利用されています。蛾の目は光をあまり反射しません。だから敵から見つかりにくいのですが、その目の構造からパソコンや携帯電話の映り込みを防ぐ機能。表示画面の反射防止フィルムの開発が進みました。また、カタツムリの殻がいつも清潔に保たれている理由を研究したところ、水の薄い膜が油汚れをはじいていることが解りました。これはタイルの製法に活用されています。新幹線のパンタグラフもフクロウの羽根の形状を参考にしています。痛くない注射針も蚊の針をまねて、針の先を波打たせるることにより実現しています。オリンピックの水泳競技の記録タイム単短縮にサメ肌リブレット構造の競泳水着の果たした役割は記憶に新しいところです。

生物の何億年もの進化の成果はすごいわけです。最近こうした技術が発展してきた背景には、電子顕微鏡の性能向上によるナノテクノロジー発展。それによって生物の微細構造と機能が明らかになってきたことがあります。その結果、生物模倣の素材の開発が進んできたわけです。

しかし、最近は単に材料の開発というハード面だけでなく、ソフト面のバイオミメティクス(biomimetics)も進んでいます。生物の情報処理や制御のシステムから学ぶことは潜在的に大きいといえます。たとえば、魚群の泳ぎのパターンを模倣したぶつからないロボットカーの開発などです。未来社会において、自動車が自動運転となっていく端緒となる研究ですね。

バイオミメティクス(biomimetics)は素材、機械、環境、エネルギー、交通システムなど多様な分野で研究が進んでいます。また、医学の分野でも期待が高まっています。まさに生物から学ぶ未来のテクノロジーです。今後、実用面だけでなく生物学的な面でも、生物の驚くべき機能が明らかにされていくと思います。この点でも実に興味深いですね。

【塾長コラム】